オリーブ葉はヨーロッパで血圧降下作用のあるハーブとして知られています。最近になりオリーブ葉エキスが免疫機能に効果があるなど注目されはじめました。
私の研究室ではオリーブ樹皮のリグナン成分の研究を行い、幾種類もの新しいリグナン化合物を発表してきました。リグナン化合物はゴマに含まれるゴマリグナンがよく知られており、ポリフェノール化合物の1つで、今話題の抗酸化作用があり、活性酸素に有効ということで、多くの薬理活性が期待できる成分です。事実、私の研究室ではがんの予防効果や抗ストレス作用を報告してきました。これらのリグナン成分はオリーブ樹皮ばかりでなく、バージンオリーブ油の中にも含まれており、バージンオリーブ油が健康に良い理由の1つになってきました。
平成12年4月から私の研究室に中国の天津薬物研究院から研究生の韓英梅さんが加わり、オリーブ葉の研究がはじまりました。
オリーブ葉の中にはリグナン成分も含まれているようですが、ごく少量で、主成分としてオロイロペイン、ルテオリン7─グルコシド、ルテオリン4─グルコシドが得られてきました。これらの成分はいずれも抗酸化作用をもったポリフェノール化合物です。
まずはじめはがん予防ということで、本学衛生化学講座の和田啓爾教授と一緒に発がん性物質などの解毒代謝に関与する酵素グルタチオンS─トランスフェラーゼ(GST)の誘導活性をマウスの肝臓を用いて調べ、オロイロペインに活性を見出しました。このことはオリーブ葉は発がん性物質ばかりでなく、体に悪い物質を体外に排除して、健康を保つ働きのあることを意味しています。
次にオリーブ葉が免疫機能に関与するということから、アレルギー性疾患に対する作用を調べてみました。アレルギー症状に深く関与している酵素のサイクリックAMP─フォスフォジエステラーゼと5─リポキシゲナーゼの2つについて、その阻害活性を調べてみました。サイクリックAMPフォスフォジエステラーゼに関しては、ルテオリン7─グルコシドとルテオリン4─グルコシドに阻害活性がみられ、その中でもルテオリン4─グルコシドに強い作用がみられました。このことは、これらの成分はサイクリックAMPの分解を防ぎ、体内にサイクリックAMPを大量に作り出し、肥満細胞から化学伝達物質の放出を抑える働きのあることを示すものと考えられます。5─リポキシゲナーゼに関しては、ルテオリン4─グルコシドに強い阻害活性がみられました。このことは、この成分は肥満細胞からアレルギー反応を誘発するロイコトリエンの放出を抑える働きのあることを示すものと考えられます。
シソの葉エキスがアトピー性皮膚炎や花粉症などに有効といわれるのは肥満細胞とは関係なく、炎症・アレルギー症状を抑制する力があるからだといわれています。これには白血球の生み出すサイトカインという物質のTNF(腫瘍壊死因子)が炎症・アレルギー反応にきわめて直接的に関係していることが明らかとなってきました。TNFを抑制して過剰になる病的炎症状態をなくせば、アトピー性皮膚炎などに効くことになります。オリーブ葉はこのTNFを抑制し、その抑制作用はオロイロペインによることを明らかとしました。
これらの研究結果からオリーブ葉は、いままで知られている血圧降下や殺菌作用などに加えて、あらたにがん予防やアトピー性皮膚炎をはじめアレルギー性疾患にも効果が期待できるハーブということができます。